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電源不要系同人サークル「Paper Entertainment Factory」のアナウンスと、適当な駄文。
続けて読んだので2つまとめて。
以前読んだ山本弘の短編で亜夢界というネタがあり、タイムパラドックスで因果律が崩壊した世界を扱ったその斬新さに感心した。タイムパラドックスはタイムトラベルを題材としたSFにおいては「この作品内ではタイムパラドックスをどう扱うか」ということを決めておかなければならない問題ではあるが、その対応は様々で、だいたいは話のアクセントとして都合の良い形で小規模に取り扱うだけにとどまる。
たとえばバックトゥザフューチャーでは過去において自分の祖父と祖母の関係が結婚前に破局してしまわないように奔走するし、マイクル・クライトンの『タイムライン』では過去に定住することを決めた人物についての記述が古い記録から見つかったりする。実につつましい影響だといえよう。
これに対し、タイムパラドックスと言うものの影響を最大限深刻に取り扱ったのが亜夢界のアイデアで、この場合因果律が崩壊してしまう。時が過去から未来へと一方向にのみ進み、原因があって結果があるという因果の流れ自体が、この宇宙に正の物質のみが多量にあって反物質はほとんど存在しないのと同じようにある種の「偏り」であり、きっかけがあれば連鎖的にその偏りは正されうる…といった感じの理論構成で、タイムトラベルによりタイムパラドックスを起こしてしまうことがそのきっかけというわけだ。ここまでハードSF的にタイムパラドックスを扱った作品を自分は見たことがなかった。
山本弘のSFでタイムトラベルやタイムパラドックスを題材にした作品を読んだのはそのときが初めてだったので、斬新な印象が一層強まったのかもしれない。

…前ふりが長くなってしまったが、短編集『シュレーディンガーのチョコパフェ』には亜夢界を扱う別の話が1つと、タイムトラベルを扱う話が1つ収録されている。そして『去年はいい年になるだろう』はタイムトラベルによる歴史改変を扱った長編だ。ここに至ると、山本弘はタイムトラベルやタイムパラドックス関係を得意なテーマ、あるいは好みのテーマとする作家だと認識を改めるべきだろう。なお、いずれもタイムトラベルやタイムパラドックスの扱いはハードSF的で重大な影響を及ぼすものになっており、そこのスタンスは崩れてはいない。そして今まで何度か述べてきた、人間の愚かしさと向き合う山本弘らしさも健在であり、今まで彼の作品を楽しんで読めていた人が失望を味わうようなことはないだろう。
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