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電源不要系同人サークル「Paper Entertainment Factory」のアナウンスと、適当な駄文。
読了。

特徴:
・演義準拠ではなく正史準拠。史書に忠実で、不明な点は不明と述べたうえで推測を書く形になっている。
「天知る,地知る,我知る,子知る。」 の四知で有名な、清廉なる人物、楊震(ようしん)のエピソードから始まる。こんな三国志は他にないだろう。
・先に述べた清廉なる人物、楊震と、極悪な人物である梁冀(りょうき)はどちらも普通の三国志では語られない人物だが、このような両極端な人物がともに現れることに古代中国らしさを感じる。極彩色の群像劇。
・宮城谷昌光という人は非常に漢字に厳密な人で、たとえば「ころす」という読みに「殺す」だけでなく細かくニュアンスが異なる何種類もの漢字を当てる。それを読んでいるうちになんとなく読み手側も漢字に詳しくなっていく。訓読みだけでなく、音読みの熟語も初めて見るようなものが多数出てくるが、漢字の意味からなんとなく理解できるようになる。まあ、これは三国志だけでなく宮城谷作品全般の特徴なのだろうが…。
・正史準拠で、ほぼ脚色を交えず、分析的な記述で構成されているので、読み物化した歴史書といった感じのアカデミックな面白さがある。人によって好き嫌いが出そうだが、自分はわりと楽しんで読めた。
・「慍(むっ)とした」「慍然(うんぜん)とした」「不快感のかたまりとなった」といった表現が頻出し、目をひく。感情まで史料に記されていたのかどうかはわからない。そうであるなら中国の史料記録者はすごいなと思うし、そうでないならここが小説としてのポイントかもしれない。記録としての歴史は冷凍食品のようなもので、読み手が実感を持って咀嚼できるようにするには感情の熱を加える必要がある、というようなことを著者はどこかで述べていた。
・物語を締めくくるエピソードは呉の滅亡なのだが、蜀の滅亡とその後に続く蜀関連の事態収拾が終わると呉の滅亡にはわずか数ページしか紙幅が割かれておらず、三国鼎立が壊れた蜀滅亡をもって実質的な終了としていると見てよいだろう。


英雄豪傑の物語として書かれた演義の、ほぼ対極と言ってよい三国志作品だろう。物語よりも史実としての歴史が好き、という人にこそ読んでもらいたい。
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電源不要ゲーム
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