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電源不要系同人サークル「Paper Entertainment Factory」のアナウンスと、適当な駄文。
さて、内容面では予告してあったエントリである。
表題どおり「ゲームにおける妥当な課金とは?」ということについて考察していくわけだが、課金をめぐる問題は以下の3つに大別される。
1)パッケージゲーム、オンラインゲーム共通の問題
2)パッケージゲーム特有の問題
3)オンラインゲーム特有の問題

順番にいこう。
1)パッケージゲーム、オンラインゲーム共通の問題
ここで問題にするのは、主にゲームを有利にする類の課金ダウンロードコンテンツ(以下DLC)についてである。RPGを例にとると、強力な武器や防具の類を有料で売るわけだ。もっと端的な例としては、ゲーム内通貨や経験値を売ったケースもある。
こういうのは、「時間がない人にとっては、時間を金で買うようなもの。必要ない人は買わなければいいだけだから、サービスを用意していること自体は良いこと」と評価する人もいるが、「何のためにゲームをしているのか?そもそもゲームとは何なのか?」という根幹を揺るがしかねない問題を孕んでいる。
ゲームの結果だけを得ることには、基本的に何の意味もない。エロゲーのアルバムモードを見る、とかいう目的があるのでもなければ、他人からクリアデータだけ貰ってきてもしょうがない。ゲームはいかにして結果を得るかという過程を、体験を楽しむものであるのだから当然のことだ。
なので、ゲームの外部にある、結果を容易に得る手段に手を出すということは、過程をはしょって体験を希薄化させることであり、ゲームの遊び応えをわざわざ減らしているに等しい。
まあ、世の中には何らかのRPGをやるたびに連射コントローラなどを使って経験値稼ぎを自動化できる手段を見つけ出してきてレベルを上げられるだけ上げ、以降を無双プレイする人もいるわけだが、そこには「システムを出し抜いてやった」という愉悦があり、そのための調査があったわけなので、本来的ではないもののゲームの攻略体験自体は存在しており、あらかじめ用意された「チート手段」に金を払うのとはやはり異なる。どちらも本来そのゲームで調整され用意された難易度というものを台無しにしているとしても、だ。
そして、そのような公式のチート手段の存在は、それがプレイヤーキャラクタとイコールでない純然たるプレイヤー(=ユーザー)によるメタレベルでのゲームへの介入であるがゆえに、プレイヤーの視点をメタレベルに引き上げてしまい遊びへの没入感を損なう危険性がある。これは実際にその手段を使わなくても、そのような手段が存在すると知ってしまっているだけで没入感を阻害する。
たとえば、脱出までのタイムを競う要素を含んだ、迷路とホラーハウスを組み合わせたアトラクションがあったとして、襲い掛かってきたゾンビ役の係員に現金を渡して出口を教えてもらうようなことがシステムとして用意されていたら白けることこの上ないだろう。
程度の差こそあれ、つまりはそういうことだ。
というわけで、ゲーム内に本来存在するものと同じ、もしくは枠組みとして同じであるものを売り、それを買えばゲームを有利に進められる、という内容のDLCは、おおむねあまり好ましいものではない。そう言っていいだろう。

ただし、他のプレイヤーとの競争や協力要素の強いゲームの場合、事情は若干異なってくる。
完全なソロプレイゲームの場合「プレイヤーVSゲーム」という構図しか存在せず、ゲームの攻略を完了するまでのプロセスがイコール遊びであり、それがどの程度楽しめるかがゲームの価値なのだが、他のプレイヤーの存在が強く関わってくるゲームの場合、プレイヤー同士の競争や共闘という体験自体の価値が大きなウェイトを占めるようになり、しばしばゲーム攻略という遊びの価値を上回る。
こういった場合、競争に勝つためや共闘における貢献度を上げるためにDLCで手っ取り早く強さを求めることは十分に理解可能な選択となる。


2)パッケージゲーム特有の問題
パッケージゲームの有料DLC、わけても発売から間をおかずリリースされるDLCは批判の対象になりやすい。特に本編のボリュームが十分とはいえない場合、ユーザーの不満が強く噴出することになる。
DLCで使うデータがすでにゲームディスクに入っていて、その使用許可を得るためのキーだけを売っているケースも叩かれやすく、これとボリューム不足が合わさると印象は最悪になる。
本編の魅力があってこそDLCも売れるのであるし、DLCで小金が稼げたとしてもユーザーの心証を悪くしていては「負の広告効果」を広めることになりかねない。
またこれとは別に、中古対策としてデフォルトではゲームの機能を制限しておき、一回限り使用可能なダウンロード用のコードでその機能を解放させるようにするやり方がある(オンラインの機能を制限しておき、オンラインパスをダウンロードさせる例が多い)。これも、新品で購入したユーザーにとってすら、過去作や他のゲームでは普通にできることのために面倒な手間をかけさせられる点で不利益しかなく、売り手側の都合を押し付ける仕様であり評判が悪い。
XBOX Oneについて初期に発表された機能が、まるっきり売り手目線でありユーザーにとっては不利益にしかならないものだったため、大不評を買ったのと同じことである。
パッケージゲームの有料DLCをリリースする場合は、ユーザー目線に立って物を考え、どうすれば売り手にとっても買い手にとってもハッピーなDLCになるかを真剣に考えないと、DLCで利益を得るどころか悪評が広まりDLCの制作に要した人件費も回収できない、という無残な失敗に終わりかねない。

3)オンラインゲーム特有の問題
オンラインゲーム特有の問題は、料金制度(=ビジネスモデル)の問題である。
混合型が採用されている例もあるが、料金制度の一方の極が定額課金制で反対の極がアイテム課金制と考えていいだろう。
定額課金制はオンラインゲームの黎明期から存在したスタンダードな料金制度で、料金を支払えば一定の期間遊べるという形式だ。
遊びたいぶんだけ金を払うという点では、ゲームセンターでゲームプレイを提供するサービスに近いともいえる。
たいへん手堅くてフェアな料金制度なのだが、定期的に料金を支払うことになるためクレジットカードを持っていないと決済がめんどうくさい。またこれは制度自体の問題ではないのだが、この手堅さが近視眼的に開発費を回収したがるメーカーに好まれやすく、毎月そこそこの額を要求する料金設定になっていることが多い。「うちのゲームをプレイしたければそちらから歩み寄れ」という、殿様商売的な料金制度と言ってもいいかもしれない。
それに対してアイテム課金制はだいたい基本プレイ無料で、さまざまなアイテムをリアルマネーを払って購入できるようになっている。
基本プレイ無料=金をかけずに始めることができ、継続してプレイしても料金を要求されない、というのは新規ユーザーの参入障壁を大きく下げる効果があり、どちらかといえばコンテンツ資産や実績に乏しいベンチャー的なゲーム会社が「無料ですのでとにかく一度遊んでみてください」と人を集めるために始めた感がある(今ではむしろアイテム課金制を採用しているゲームのほうが多くなっているが…)。とにかくプレイしてもらわないことには話にならないし、またオンラインゲームはある程度のアクティブユーザー数を確保できなければすぐに廃れていってしまうからだ。ユーザーの囲い込みが必要なのである。
ただ、言うまでもなく単に「リアルマネーを払ってアイテムを購入できる」というだけではビジネスにならないので、あの手この手で購入意欲を煽るようにゲーム自体が作られていることがほとんど。こういった「ユーザーからの集金装置」としての機能を組み込んだゲームのデザイン、システムというのは、そういった制約の無い定額課金制のオンラインゲームやパッケージゲームと比べて特殊であり歪みをかかえている。
この歪みは積極的にユーザーに課金アイテムを売り込もうとしているゲームほど顕著に現れ、課金しないと非常に不便だったり、PvPで無課金ユーザーが課金ユーザーに蹂躙されまくって楽しめなかったりといったゲームシステム上・ゲームバランス上の問題を抱える例は少なくない。…いや、少なくなかった。言い直したのは、それもすでに過去のものとなりつつあるからだ。
ソシャゲバブルで一気に増えた基本無料アイテム課金ゲームは激しい競争にさらされ、先に述べたような無課金ユーザーに優しくないゲームからは無課金ユーザーが離れていった。無課金ユーザーが離れるとアクティブユーザー数が減少してゲーム自体が廃れるため、無課金ユーザーでもある程度は楽しめるようなバランスにするのが現在でのセオリーである。Pay to WinからFree to Winへの転換と呼ばれている。
それでもやはり課金アイテムを買ってもらわないとビジネスが成り立たないため、ゲームの本筋とは無関係なところで課金したり、PvPの重要度を下げたり、各タイトルさまざまに工夫している。そういった要素にどっぷりハマる廃課金ユーザー、節度を持って手を出す課金ユーザー、ゲームの利便性向上要素程度にしか金を払わない微課金ユーザー、それでも一切の金を落とさない無課金ユーザー、と分類した場合、収益の大部分は廃課金ユーザーに支えられているのが実情だという。これはこれで非常に歪んでいると思わずにはいられない。

あとこれはオンラインゲームそのものにかかわる問題ではないが、Free to Winの良質なゲームが増えてくると「ゲームって無料でやるもんじゃないの?」という意識の人間が増えてくる可能性が高い。そうするとおそらくパッケージゲームの売れ方が悪くなっていくことは避けられない。
パッケージゲームが本業でFree to Winのゲームも開発している会社は本業の足場を掘り崩しているのかもしれない。新聞社が記事をネット配信して売れ行き低下を招いたのと似ている。
幸い、と言うべきか、コントローラや立体視などハード面でブラウザゲームに実現できないことはまだまだあるので、今後はさらにそういった面での差別化が重要になっていくだろう。

以上、3つの問題の中身を掘り下げて見て来たが、表題にある「妥当な課金」かどうかというのは結局ユーザーの意識の上で「これを買うのに、このサービスを受けるのにこれぐらいの金を払うのは当然」という感覚が定着しているかどうかによる。
その点で、最後に書いた「ゲームって無料でやるもんじゃないの?」という意識の問題は結構深刻だと言える。
昔はゲーセンでしかゲームできなかったから1プレイごとに金を払って遊んだ。それが当然だった。
コンシューマゲーム機が発売され、家でもゲームで遊べるようになったが、当然ゲーム機とゲームソフトが無ければ遊べないので、金を払って買って遊んだ。それが当然だった。
オンラインゲームは初期には月額課金の定額制がほとんどで、それが当然だった。しかし、ユーザーの囲い込み競争から基本無料のスタイルが生み出され、それはメーカー同士の消耗戦と収益構造のいびつさをもたらしている。これはケータイ各社がユーザーの取り込み合戦の末0円は当たり前でキャッシュバックに何万つくか、という状況になり、そのサービス分は結局全ユーザーの利用料から捻出されている、といういびつさと似ている。
全体的な傾向としてはこれは止めようがないので、そのうえでどうするか?を考えるのがメーカー各社の生き残りを賭けた課題となるだろう。
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