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電源不要系同人サークル「Paper Entertainment Factory」のアナウンスと、適当な駄文。
創元SF文庫の年間日本SF傑作選で、伊藤計劃の短編が含まれている。
配置的にはトリだがまずはそれから。

『The Indifference Engine』
虐殺機関、MGS GUNS OF THE PATRIOTS、ハーモニーと、全てで紛争地帯が舞台の一部に含まれるが、本作もその例に漏れない。
家族を皆殺しにされて部族間の戦争に身を投じた少年が、外国の介入で終戦させられて平和推進プログラムに従った措置を施される。それは、外見的特徴などから「あいつは俺と違う、憎むべき部族の人間だ」と判別する脳の働きを阻害して、憎しみの元をなくそうというものだった。
以上、あらすじ終わり。
確かに、我々の頭には思考を省力化し、1つのことを関連事象に類推適用しようとする働きがある。たとえば、親しい友人が犯罪に巻き込まれたとしよう。仮にその加害者が外国人だったら、その国の人間全体にネガティブなイメージを抱き、警戒するようになるだろう。また仮にその加害者が外国人でなくたちの悪い異性で、友人はそれに騙されたのだとしたら異性全般に警戒心を抱くようになるかもしれない(自分に親しく付き合っている異性がいなければなおさら)。
しかし、人間は非常に個体差が大きいので、ある簡単な基準で人をカテゴライズしてその全員を同じように判断する、というのは間違っている。つまりはこれが「偏見」であり、安易で不適切な思考の省力化である。
で、その「人間をカテゴライズ」する機能を失わせれば偏見もなくなり、偏見に基づいた憎悪もなくなるだろう、と(部族や種族全体で憎みあうなんてのは偏見に後押しされていなければ絶対に起こる類のものではない)。

うん。理屈は正しそうだが、そんな至高のお題目で何もかもうまくいくほど人間は賢くもなければ理性的でもないよね。
安易で不適切でも、偏見は思考の省力化パターンの1つ。省力化なしで思考を処理しきるだけの能力のない人間は、そのぶん精神に大きな負担がかかり、いずれ別の方向に歪みが噴き出すだろう。
結局、人の世の矛盾を解消しようという運動の前には常に、人自身の「能力不足」が解決不能な問題として立ちはだかっている。
そんなことを思った一篇。

『パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語』
作者の円城塔は、伊藤計劃と同じく第7回小松左京賞の最終候補になって両者とも落選し、改稿した作品がともに「ハヤカワSFシリーズJコレクション」から刊行され、ともに日本SF大賞候補にノミネートされて仲良く落選、という経緯のせいで何かと二人まとめて話題にされやすいらしい。それで本作も読んでみたが...
まったく趣味に合いませんでした!
表現的には平易に読者に確実に意味を伝え、ストーリーで語りかける手法...の真逆で、表現に技巧が凝らされ一文一文咀嚼しないと意味がわからない。表現そのものが主でありストーリーは従であるかのように、ストーリーは特に主張性を持たずむしろ意味不明。
こういう、文章表現に眩惑されるような読書体験を好む人は存在しているんだろうが...俺はノーサンキュー。

『七パーセントのテンムー』
ご存知、「と学会」会長の山本弘。本作はSF小説としても十分面白く、山本弘の文筆家としての確かな実力を感じさせるとともに、疑似科学をネタとしてしっかり取り入れつつ、現実に起こっていることは変わらないのに科学的な解釈が異なるだけで思い惑う人の心の不確かさを書き出すあたりが「と学会」会長の作品として貫禄の出来栄えでした。この傑作選中一番面白かった。おすすめ。

残りは、まあ、とくに語るほどのものはないかな...
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