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電源不要系同人サークル「Paper Entertainment Factory」のアナウンスと、適当な駄文。
映画はどうか知らないが、小説はいわゆるモキュメンタリーである。
未曾有のゾンビ災害を、その終息宣言を期に回顧録にまとめたという体裁をとっている。

読み終わった率直な感想は、「…で?」だった。
モキュメンタリーと言う形式のゆえもあってこの小説にはテーマと言うものが存在しないし、感情移入の対象もないし、練られたストーリーというようなものもありはしない。
背景や人物の設定を行い、そこに何らかの事件を起こせば、あとは設定に沿ってシミュレーションを進めれば事態が推移して事件はなんらかの形で収束する。だが、それを描写しただけでストーリーとして面白いものになるかといえば、そんな保証はない。
もちろん作中で取り上げる各エピソードは作為的に配置されているわけだが、それは「この国ならこういう事件が派生的に起こるだろう」「この国の人々ならこういう反応を見せるだろう」「この国の首脳部はこう振舞うだろう」というステロタイプと、(深海のYrrのときにも感じられた)商業的理由によるバイアスから生み出されるものの予想範囲内に収まっており、とくだん鮮烈な反応を胸中に呼び起こすようなものではなかった。
「災害の第一発生地は中国(ざまぁ)」
「反攻作戦を唱道したのはやっぱりアメリカ(アメリカ最高)」
ロシアやインドでろくでもない事件が起こり、平和ボケした日本人が大量自殺し、要塞じみた邸宅に立て篭もったセレブ達がゾンビではなく民衆に襲撃され…と、ルサンチマンやらナショナリズムやら黄禍論やらいろんな点であっちの一般読者を気分良くさせようとしているその手練手管には感心する。
未曾有のゾンビ災害、という荒唐無稽さはFKは特に非難の対象としない。それは「バトルロワイヤル」の殺し合いゲームと同じで、人々を生き死にのかかった極限状態に追い込むための舞台装置にすぎないと理解している。
が、ゾンビ災害はほんとうに現象としての災害に過ぎず、解析されてしまえばあとは単に対処法どおりに処理すればいいだけのものに成り下がる。かといって解析の過程がドラマになっているわけでもない。

この作品を要素単位で分析すると、「背景設定、登場人物は平凡そのもの。現実世界とほとんど変わらない近未来だから」「ゾンビ災害は科学的には荒唐無稽だが、災害としてはシンプルな挙動を示すもの。解析にも特にドラマなし」「事態の推移は妥当。しかしそれゆえに意外性も乏しい」という感じ。海外のSFでよく見かける「センスオブワンダーに溢れるぶっとんだ設定で話を動かし始め、あとは事態が収束するまでを精密にシミュレートして描写すれば示唆に富んだ話ができた」っていうのと作りは似ているが、設定が平凡なので読後になにも心に残らない話に仕上がった、というところだろう。
ま、正直読まなくていい本だと思います。

…このあと続けて読み始めたJ・P・ホーガンの「断絶への航海」が示唆に富んだSFなので、特に差が際立ってしまった感はある。
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