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電源不要系同人サークル「Paper Entertainment Factory」のアナウンスと、適当な駄文。
『アオイトリ』の御影氏が企画・シナリオ担当したタイトルで、アオイトリの直前の作品。アオイトリとは対になっているとも言われている。
評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:8/10
エロ:9/10
サウンド:9/10
総評:8/10

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
命令や断定の形で発した言葉がその内容通りの影響を強制的に人に与える「言霊」。その能力を持つ神の末裔たちの隠れ里で育った青年が、人として生きるために閉鎖的な里から逃げ出す。行き倒れ寸前で町にたどり着いた青年は、言霊の力でかりそめの家族と住む場所を得て、普通の人として生きることを学んでいく…というストーリー。
話の構造が興味深い。ヒロインは4人で、それぞれABCDで表すとシナリオは「A→分岐A'/B→分岐B'/C→分岐C'/D」と進む。ダッシュ(')付きの分岐に進むとそのまま個別エンド。いわばシングルエリミネーション形式?BはAの、CはABの、Dは他全員のシナリオを前提としたシナリオになっている。ループものではない場合に、他のヒロインのシナリオ中に得た知識等を登場人物に活用させようとすれば確かにこの構造は必然である。しかしその結果、3人を順に袖にしながらシナリオを進めていかねばならないので、苦い。この苦さはストーリーに特に必要な味わいではなく、『アオイトリ』ではループものになったこともあり取り除かれている。
一般論として、ストーリー中で感動させる/感情を揺さぶる/泣かせるのは「展開」「映像」「音楽」「音声」の巧みな組み合わせ方によるもので、この技術を「エモーショナルな技術」とここでは称する。本作は基本的にはごく狭い範囲の人間関係についての話で、スケールが小さく自分の好みに合致してはいないのだが、エモーショナルな技術は間違いなく高く、変にスレていたり細かいことを考えすぎたりしない限りは気持ちよく感情の波に浸れるだろう。
まあ自分はスレているうえに細かいことを考えすぎる質なのだが、それでも堪能した。
特に、最後のヒロインのシナリオは専用のOPムービーが用意されている凝り様で、涙腺デストロイヤー。
・人としての感情が希薄だった主人公は、ある人物に出会って初めて「他者への怒り」を知るのだが、自分はこの怒りにあまり共感できず、その人物を哀れに思う気持ちのほうが強かった。絶えず肉体を苛まれている状況では、人間の心は脆いですよ…。
・『アオイトリ』もそうだが、人間の闇の部分まで踏み込んでいくシナリオは好き。心のうちに闇を抱えてなお気高い生きざまや、闇を知っても前に進む意志が描かれるのが好き。闇があったほうが光はより映える。
・イーガンSFのスナップショットのような概念に親しんでいると「ん?何か問題ある?」みたいな考えになりかねないので超越的な概念に親しみすぎるのも考え物だな。生物学的に死んでもミームとして生きる、とかもね。
・タイトルは、日本神話系の知識がある人なら「天津罪」だとすぐわかるだろう。確かに、各ヒロインのシナリオはある種の罪悪感を軸にして作られているが、タイトルにはあまり関係がない。
・個別エンド部分はとってつけたように小さな盛り上がりが用意されているが実質的にはHシーン詰め合わせにすぎない。シナリオの山はすでに通り過ぎているので、個別エンド部分に期待すると肩透かしを食う。まあ、おまけモードに本編外のHシーン並べる形よりはずっといいのだが。
・自分の命を擲つ決断をあっさり行う主人公はヒロイックだが、人としての幸せの実感が乏しかった人間ならではの「生への執着の薄さ」ともいえる。これは『アオイトリ』の主人公とも共通しているし、ジュブナイルらしさでもある。人生の甘さを存分に味わった人間は生き汚くなるものだ。

【エロ】
水準と特徴が『アオイトリ』に近く、前作『クロノクロック』との間には明らかに何らかのブレイクスルー、もしくは意識革新が存在する。本作で実現されている『アオイトリ』の特徴とはすなわち、ねちっこく多様なエロティシズムの追求と、大量のCG差分である。
まだ徹底されてはいない。「テキストでこの描写を入れているのにその差分は無し?」と思うところや、CGと描写の不一致もある。つまり『アオイトリ』で完成に至る進化過程にあるということだが、目指している水準が高いがゆえに実現されているレベルもこの時点でかなり高い。
だが大きな違いもある。本作ではまだエロゲ的お約束の域を出ておらず、設定とシナリオの妙でお約束を超克した『アオイトリ』にはその点では遠く及ばない。プレイする順番が逆だったなら、改善できる点というのはまだまだあるものだな、と素直に感心できたところだろう。

【サウンド】
盛り上げるべきところで盛り上がるBGMが流れ、ボーカル有りのオープニングテーマとエンディングテーマも高品質。だが本当に素晴らしいのは挿入歌で、使われるタイミングも相まって涙腺攻撃力が抜群。声の演技やチュパ音などにも隙はない。…ボイスの伏字加工もない。が、日常系のBGMの水準は『アオイトリ』には劣ると感じたので満点とはしなかった。
なお、前作『クロノクロック』ではボイスの伏字加工があったので、この点でも何らかのブレイクスルー、もしくは意識革新があったことが裏付けられる。

…という感じ。
『アオイトリ』と対で語られるだけあり、全方位手抜き無しのストロングスタイル志向で良き。自分の目から見た完成度は『アオイトリ』のほうが上で、個人的な好みにも合致しているが、本作のほうが比較的ライトな層にも受け入れられそう。
どのあたりが対かと考えれば、『アオイトリ』が「悪魔の力が物語上で重要な役割を果たす、命が繋ぐ冬の物語」、『アマツツミ』が「神の力が物語で重要な役割を果たす、言葉が繋ぐ夏の物語」ということだろうか。西洋風と日本風という違いもあるかな。他にもいろいろありそう。
逆に、ストロングスタイル志向なところ以外にも似た部分は多くある。前述の、主人公が浮世離れしていて最初は幸福実感に乏しく人のために自らを擲つことをためらわない性格だとか、他者を強制的に変えてしまう能力を持つがゆえにコミュニケーション初級者であるとか。どちらから始めるにせよ、こういった相違点や類似点を考えながらプレイするのも楽しいだろう。
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プロフィール
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性別:
男性
職業:
ゲーム会社勤務
趣味:
電源不要ゲーム
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