電源不要系同人サークル「Paper Entertainment Factory」のアナウンスと、適当な駄文。
読了。イーガンの最新短編集。
★クリスタルの夜
シミュレーション世界の中で知性を誕生させる話というのはSF的には新味はない。登場人物が被造物側か創造者側かという違いはあれ、『神は沈黙せず』もこの系統の話だ。
ただ、「なぜ知性を誕生させようとするのか?」という点について『神は沈黙せず』ではゲームのAIや機械に組み込むAIとしての利用程度でしか言及されていないが、本作ではもっと強力で実利的な理由がつけられている。
「創造者と同等あるいはそれ以上の知性を備えた被造物の集団が、創造者の世界よりもクロックアップされた世界で自然科学の研究と調査を行えば、その成果をはるかに早く受け取ることができる」すなわち、自然科学的発見について未来を先取りすることができる、ということである。これにはなるほどと思わされた。
しかしその一方で、人間は「できそうだったからやってみた」というだけの理由でもいろいろなことをやるものではある。特に研究者は。だから実際のところこの題材に理由はさほど重要ではないのだろう。
★エキストラ
「クローン」と「精神は脳のどこにあるか」という、これもわりとありふれた題材の話。しかし、実際にクローン技術が当たり前のように使われている社会とはどのようなものであるか?という描写にイーガンの入念なる想像力が結実し、読み飛ばして「ふ-ん」で終わるような話の域を脱している。
★暗黒整数
『ルミナス』の続き。純粋に数学的な計算だけで世界を揺るがしたり揺るがされたりするという素晴らしく飛躍した発想はルミナスの時点ですでに発されている。本作は一発ネタだったそのアイデアに肉付けしてドラマとスペクタクルを盛り込んだもの、という感じ。『ルミナス』だけでは映画にはなりえないが、『暗黒整数』とあわせて一本の映画にすることは可能であろう。
★グローリー
冒頭数ページ分の、超光速ではない現実的な方法での宇宙航行法についての描写はマニアックすぎて自分にはちんぷんかんぷんだが、これもハードSF書きイーガンの真骨頂だろう。テーマとしては「拡張者」と「探求者」という2つの知性体のあり方、および後者が全てを知り尽くして目的を喪失する可能性について。哲学的命題としても実用性が希薄なことこのうえないが、人格のソフトウェア化をしばしばガジェットとして扱ってきたイーガンゆえに、「知が極まったその先」を思索の対象にするのは実に彼らしいと思える。
★ワンの絨毯
『ディアスポラ』の別バージョンの1エピソードのような話。強烈などんでん返しとして素晴らしいセンスオブワンダーが炸裂する傑作。これぞSFを読む醍醐味。
★プランク・ダイヴ
イーガンの真骨頂である、ほぼ物質的な制約から解き放たれた人間知性を登場人物とし、彼らの特性ゆえになしうる自然科学的探求のための決死行。これまたマニアック極まりないハードSFチックな目的である。
しかし、ガジェットを取っ払ってテーマだけをむき出しにしてみれば、「他の誰にも結果を伝えることができない、単なる自己満足としかいいようのない探求の意味」についてであり、それに肯定的なイーガンの書き様に、後にぺんぺん草も残さない自己満足的な生き方も是とするFKは共感を覚える。
★伝播
ガジェット的にはグローリーのそれとほとんど同じで、発表された時期もほぼ同じなので、ネタを共有した姉妹作と言えるかもしれない。「探求者」としてのあり方への言及もあり、テーマ的にも共有している部分がある。
★クリスタルの夜
シミュレーション世界の中で知性を誕生させる話というのはSF的には新味はない。登場人物が被造物側か創造者側かという違いはあれ、『神は沈黙せず』もこの系統の話だ。
ただ、「なぜ知性を誕生させようとするのか?」という点について『神は沈黙せず』ではゲームのAIや機械に組み込むAIとしての利用程度でしか言及されていないが、本作ではもっと強力で実利的な理由がつけられている。
「創造者と同等あるいはそれ以上の知性を備えた被造物の集団が、創造者の世界よりもクロックアップされた世界で自然科学の研究と調査を行えば、その成果をはるかに早く受け取ることができる」すなわち、自然科学的発見について未来を先取りすることができる、ということである。これにはなるほどと思わされた。
しかしその一方で、人間は「できそうだったからやってみた」というだけの理由でもいろいろなことをやるものではある。特に研究者は。だから実際のところこの題材に理由はさほど重要ではないのだろう。
★エキストラ
「クローン」と「精神は脳のどこにあるか」という、これもわりとありふれた題材の話。しかし、実際にクローン技術が当たり前のように使われている社会とはどのようなものであるか?という描写にイーガンの入念なる想像力が結実し、読み飛ばして「ふ-ん」で終わるような話の域を脱している。
★暗黒整数
『ルミナス』の続き。純粋に数学的な計算だけで世界を揺るがしたり揺るがされたりするという素晴らしく飛躍した発想はルミナスの時点ですでに発されている。本作は一発ネタだったそのアイデアに肉付けしてドラマとスペクタクルを盛り込んだもの、という感じ。『ルミナス』だけでは映画にはなりえないが、『暗黒整数』とあわせて一本の映画にすることは可能であろう。
★グローリー
冒頭数ページ分の、超光速ではない現実的な方法での宇宙航行法についての描写はマニアックすぎて自分にはちんぷんかんぷんだが、これもハードSF書きイーガンの真骨頂だろう。テーマとしては「拡張者」と「探求者」という2つの知性体のあり方、および後者が全てを知り尽くして目的を喪失する可能性について。哲学的命題としても実用性が希薄なことこのうえないが、人格のソフトウェア化をしばしばガジェットとして扱ってきたイーガンゆえに、「知が極まったその先」を思索の対象にするのは実に彼らしいと思える。
★ワンの絨毯
『ディアスポラ』の別バージョンの1エピソードのような話。強烈などんでん返しとして素晴らしいセンスオブワンダーが炸裂する傑作。これぞSFを読む醍醐味。
★プランク・ダイヴ
イーガンの真骨頂である、ほぼ物質的な制約から解き放たれた人間知性を登場人物とし、彼らの特性ゆえになしうる自然科学的探求のための決死行。これまたマニアック極まりないハードSFチックな目的である。
しかし、ガジェットを取っ払ってテーマだけをむき出しにしてみれば、「他の誰にも結果を伝えることができない、単なる自己満足としかいいようのない探求の意味」についてであり、それに肯定的なイーガンの書き様に、後にぺんぺん草も残さない自己満足的な生き方も是とするFKは共感を覚える。
★伝播
ガジェット的にはグローリーのそれとほとんど同じで、発表された時期もほぼ同じなので、ネタを共有した姉妹作と言えるかもしれない。「探求者」としてのあり方への言及もあり、テーマ的にも共有している部分がある。
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