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電源不要系同人サークル「Paper Entertainment Factory」のアナウンスと、適当な駄文。
『車輪の国、向日葵の少女』と同じ、原画家・有葉氏とシナリオライター・るーすぼーい氏のコンビによる作品で、美少女ゲームアワード2008・大賞受賞作。DMMの夏の半額セールで購入。

評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:9/10(重い話が苦手なら-1)
エロ:6/10
サウンド:6/10(クラシック好きなら+1)
総評:8/10(重い話が苦手なら-1)

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
公称では「命をかけた、純愛ADV」だが内容的にはクライムサスペンス×ヒューマンドラマ。「魔王」という悪魔的天才犯罪者が引き起こす犯罪を追っていくストーリーだが、その原因として一つの家庭を崩壊させた犯罪があり、「魔王」側の視点ではその復讐譚である。
犯罪者VS探偵、のような小気味よい頭脳戦が展開されるシーンも多くあるが、ストーリーの核となる部分では幸せが壊れていく過程、心が歪んでいく過程、歪んだ心などの描写が濃厚で、話は重たい。他にも世間の冷たさ、司直の信用ならなさ、無知や無関心の愚かしさ等等がありヒューマンドラマの詰め合わせかな?ってぐらい内容が濃い。
さらに、反社会組織、裏社会、犯罪学、クラシック、フィギュアスケートなどの知識が詰め込まれており教養増加の面でも満足できる。
さて、自分が重視している「心揺さぶられる感覚」や「涙腺攻撃」はどうだろうか?ドラマの重厚さに圧倒されるような感覚はあった。しかし、あからさまな涙腺攻撃は無かったように思う。最終章でガン泣きしたと書いていたレビューがあったが、自分としては主人公側の自己犠牲は自身で選んだ「人生の価値ある使い方」にすぎないので、それに共感を覚えて讃えることはあっても泣くようなものではない。ただ、最後の主人公の自己犠牲は少々愚かしくも映る。世間の冷たさを過度に恐れ、司直を信用できなくなってしまったがゆえに、自身を過度に強く擲ったように見える。それが一番の悲劇性かもしれない。実際、そこまでの分岐で他人に胸襟を開いたり警察を頼ったりすれば最終章以外のルートに流れていくので、それも示唆的に思える。
まとめると、ストーリー重視のゲームが好きで、重い話が苦手でないなら触わってみて損のない内容といえるだろう。

【エロ】
基本的には交感で、よくできたストーリーが感情移入面でプラスに働くので味わい深い内容。エロゲ的お約束が鼻につかない程度にエロくするに工夫もされており、匙加減は良好。
とはいえ、エロ目的でプレイするようなゲームではもちろんない。

【サウンド】
タイトルからしてクラシックの曲名を組み合わせたものなので想像に難くないであろうが、使われている曲の多くはクラシックのアレンジらしい。自分にとっては特にプラスでもマイナスでもない。エンディング曲や最終章の挿入歌は18禁ゲームソングのオールタイムベストに挙げる人も多いようだが、曲自体の良さよりもストーリーの良さに引きずられたものであろう。

…という感じ。感情移入しすぎると、読み進めるのが苦しくなるほど重たい場合があるので「落ち着け、これはただのフィクションなんだ」と思い出して気楽に読み進めよう。そういえば『車輪の国、向日葵の少女』も重たい話だったような気がするなぁ。プレイしたのがあまりにも昔なので、詳細はもう覚えていないが…。
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『黄昏のシンセミア』のあっぷりけの作品で萌えゲーアワード2017・話題賞受賞作。DMMの夏の半額セールで購入。

評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:7/10
エロ:5/10
サウンド:6/10
総評:6/10

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
伝奇サスペンス。先が気になる展開で、テキストを読み進めさせる誘引力が強い。そのへんはジャンルの有利さか、とも思うが、駄作ならそれもままならないので素直に評価しておくべきだろう。
謎の焦点である存在の設定に一工夫あり、多様な展開と人に頼りがたい状況、数多くの悲劇を超えた先の大団円ルートを成立させている。これは一見の価値あり。ただ、ルート進行はほとんど固定で選択肢も少ないので攻略したという感じは薄く、あくまで読み物である。TRPGのシナリオとして使うと面白いかもしれない。
読み物として見た場合、話はよくまとまっているとは思うがエモーショナルな演出はやや淡泊で、感情を揺さぶる力は弱い。そのようなシーンではもう少しテキストの尺を取ったほうがよいと感じた。

【エロ】
交感だけでなく、駆け引きとしての誘惑や人ならぬものからの誘惑などもありシチュエーションの幅はなかなか。しかし主人公は人格の善良さを買われて事件の舞台に招かれたような人物なのでごくごく常識的な範囲に収まる。エロ目的でプレイするようなゲームではない。

【サウンド】
よく聞くことになるBGMは伝奇ものとしての雰囲気があって良い。が、常に盛り上げレベル高めのBGMのため本当の意味で盛り上げるべきシーンでいまひとつ盛り上げきれていない。エモーショナルな演出が弱く感じた一因である。OPやEDのインストゥメンタルやピアノバージョンを作るだけでもそれっぽいものになりそうだが…。

…という感じ。誤字、ボイスの一部の不一致、CGと描写の不一致、CG差分ミスなどがあり、チェックにあまり工数がかけられていないことが窺える。エモーショナルな演出の弱さも、シナリオ担当とBGM担当のすり合わせが不十分だったのだろうか、と思えてしまう。ただ、セリフの途中での立ち絵変更などは行われており、シナリオ担当は頑張っていたようだ。となると、ディレクターの力不足か。光るところはあるが、惜しいゲームと評するのが妥当だろう。

『ハロー・レディ!』の追加シナリオ。

評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:6/10
エロ:5/10
サウンド:6/10
総評:6/10(『ハロー・レディ!』本編が好きなら+1)

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
本編で攻略対象ではなかった2人の追加シナリオ。どちらも、本編に影響しないように意図的にコンパクトにまとめられており、意外性はないがよくまとまった内容、という印象。
美鳥シナリオは特にコンパクト感が強いが、オンスロート化の性質上まあ無しではないIF。本編に影響しないように、奇跡のような手段で美鳥が助かったりするような展開もない。とはいえ主人公は別にヘタレではないので、必死に頑張って細い期待をつなぐような話になっている。主人公の能力についてアクロバティックな解釈を行って展開を成立させているので、それを面白いと思えるかご都合主義と思うかで評価が分かれそう。
菱吾シナリオはクラウンの誰とも特別に親密にならずに(あるいは、まんべんなく親密になったうえで)主従二人で復讐完遂という話。お互いを気遣いつつも一定の距離感は保っていた不器用な二人のやりとりがこそばゆくも小気味よい。
どちらも、そのキャラの過去はちゃんと掘り下げられているのでFD・追加シナリオとしてはまず及第点と言ってよいだろう。

【エロ】
交感としてのHシーンで数も最小限。特に美鳥のほうは展開上切なさを帯びたシーンにしかなりえないのでエロ目的でどうこうするような内容では無い。

【サウンド】
BGMなどは本編と同じ。個別シナリオがあるので、菱吾の独特かつあやしげなトークは本編より堪能できる。ドラマCDの内容が付属しているのでそちらでさらに菱吾+エルのトークも聞ける。

…という感じ。あくまで追加シナリオなので本編を気に入った人前提だが、値段も安いので手を出してみるのもいいだろう。

『景の海のアペイリア』『あの晴れわたる空より高く』の範乃秋晴氏がシナリオ担当。
評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:7/10
エロ:6/10
サウンド:5/10
総評:6/10(甘ラブ恋愛ものが好きなら+1)

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
園芸部所属で料理人志望の主人公の前に、リンゴの木の妖精(自称)が現れ「一学期が終わる前に誰かと恋仲にならないと君に不幸が訪れる。自分が協力してあげるから誰かと恋仲になれ」と言われる。主人公は疑いながらもなんとなく恋愛を意識するようになりつつ学園生活を送る…という感じのストーリー。
普通のノベル系とはやや異なるゲームシステムで、恋愛SLGに近い。平日は10個ぐらいの候補からイベントを選んでそれを読む。登場キャラの誰に関係したイベントかは可視化されているので、基本的には好感度を稼ぎたいキャラを選べばよい。週末には、その週の平日に一番多く好感度を稼いだキャラのイベントが起こる。日曜日の夜には、キャラの好感度を調べたり電話したり告白を決意したりといった、恋愛SLGによく見られるシステムがある。
告白タイミングを選べるので、女の子からの告白を待ったりもできる。チュアブルソフトの作品なので、同ブランドの『Sugar+Spice!』と同じゲームシステムもしくはその発展形なのかな?
個別ルートに入ったあとは、結末にかかわる分岐をこの告白システムを使って選択させていたりもする。
範乃秋晴氏らしく、日常パートは軽妙でギャグ満載下ネタ多数。そしてシナリオ構成は設定・伏線とも緻密。たとえば泣きゲーによくある「いつ死んでもおかしくない病弱ヒロイン」はしばしばご都合主義の塊で、特に「そんな子とセックスしてんなよ…」という気分になって微妙極まりないのだが、本作ではアレルギー性疾患と設定することで納得感ある形で落とし込んでいる。
というわけで、よくできているとは思うのだが、本作は甘ラブ特化であり人を感動させる方向に特別に力を注いでいるわけではないので、自分のストライクゾーンからは外れていた。

【エロ】
甘ラブいちゃいちゃを堪能できる内容。一部にはアニメもあるがクオリティはさほど高くない。一部のエロゲ的お約束がひどいのは他の範乃作品と同様。

【サウンド】
可もなく不可もなし。盛り上げるシーンというのにあまり注力していないのは上で述べたとおりだが、BGMのほうでも特に気合が入ってないのでどうにも印象が弱い。

…という感じ。範乃秋晴氏らしさは随所で感じられたが、「甘ラブ恋愛もの」というテイストが最重要でストーリーはその補助、という作品では同氏の真価が発揮されないように思えた。やはりストーリー重視の作品でこそ輝く人だろう。

『景の海のアペイリア』の範乃秋晴氏がシナリオ担当。
評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:9/10
エロ:7/10
サウンド:7/10
総評:8/10

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
廃部寸前の部活に勧誘された主人公がメンバーとともに大会優勝を目指すという部活ものテンプレだが、題材が「学生によるロケット打ち上げ」。よくこんな題材を選んだな!その志に感服させられる。
多岐に渡る科学的知識が求められる題材だが、図解入りの説明もあってとっつきは悪くない。雑学的知識が増えるタイプの話が好きな人にとってはたまらないだろう。そう、私のことだ!
チームワークが物を言うタイプの部活の部活ものはだいたい熱いが、ロケット打ち上げというロマン溢れる題材と合わさって本作のストーリーは尋常でなく熱い。「失敗は成功の母」という言葉があるが、こういった開発史の文脈で語ってこそもっとも輝く。
そして、本作がプレイヤーに与える、説教臭くないポジティブさは比類ないもので、私が過去にプレイした全ての読み物系ゲームに勝っている。いわゆる泣きゲーが美味だが栄養に乏しいお菓子だとすれば、本作は栄養満点の料理といえようか。まさに心の糧。本作から18禁要素と下ネタギャグを取り除いてコンシューマ化できれば、中学生や高校生にこそオススメしたいゲームになるだろう。

【エロ】
CGは可もなく不可もなしという程度だが、各ヒロインごとに本編中3回程度+おまけシーンと回数は頑張っており、テキストやシチュエーションで各部にこだわりが感じられる内容。特に、キスへのこだわりはかなりのもの。一部、エロゲ的お約束がひどすぎると感じた箇所はあるが、「普通=平凡」の域を超えるエロをファンタジー等の設定面で処理できない以上しかたないと考えよう。

【サウンド】
全体的に見ればまずまずの水準。盛り上げるシーンでの曲の出来がよく、ボーカル曲も良質なので評点は高め。盛り上げるシーンでの曲2種が、イントロループと本体部分を分けて作られており、テキストを送ってクライマックスのシーンに入ったタイミングで本体部分に進ませるようにしているのは、シンプルながら良い工夫。

…という感じ。ストーリーの点より総評の点を低くつけるのは珍しいが、立ち絵クオリティが低いなどのマイナス要因があるので、トータル評価は下がった。とはいえ、ストーリーは間違いなく良いものだった。
「範乃秋晴がシナリオ担当なら鉄板」と誰かのレビューにあったが、今のところ自分も同意する。『私が好きなら「好き」って言って!』も購入済みなのですぐにもプレイしたい。

近年のパープルソフトウェアの代表作は?と聞かれれば『アマツツミ&アオイトリ』と『ハピメア&ハピメアFD』と答える人が多いとのことなので、ではどのような内容でしょう?と触れてみた次第。
評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:6/10
エロ:6/10
サウンド:8/10
総評:6/10

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
シナリオは森崎亮人氏。
夢遊病で夜の森に迷い込んだ妹を探しに出て、連れ帰れなかったことがトラウマになり、妹を失わずに済んでいる幸せな夢に逃避した過去を持つ主人公。妹のかわりとして振舞う幼馴染に支えられながら、普通の生活を送れていたが、ある時から他の人と内容を共有する奇妙な夢を見るようになり、克服できていたはずのトラウマと改めて向き合うことになる…という感じのストーリー。
雰囲気は良い。しかし、結局ごく少数の登場人物の心の中だけの問題に終始するストーリーなので、その時点で自分としては評点が下がってしまう。そうするとあとはどれだけ感情を強く揺さぶってくるか、とか、ありきたりでない心のカタチを見せてくれるか、とかが重要なのだが、それもまあそこまで意外性のない内容や展開だったので、悪い出来とはいえないが人に勧めるほどではないと言わざるをえない。エモーショナルな技術が特別に優れているというわけでもなかった(後述するとおり、音楽はかなり良いのだが…)。
だいたいのルートで基本的に主人公がヘタレ(厳密には「虚弱体質で、他の人の世話になりまくりなので自己評価が低い」)なので、最終シナリオでは少し主人公が頑張っていてカタルシスがある。だが、結局のところ「夢で幸せでも不毛。今は現実が辛くても、幸せに変えていきたい。というかそうしてやる」っていう、夢が題材ならまあ結論はそうなりますよねという主張が全てなので意外性は皆無。ノリと雰囲気にどれだけ浸れるか、にかかっているのだが、前述のとおりエモーショナルな技術はそこそこ止まりなので…。
あ、妹エンドがあることは評価できる。妹と過ごせる幸せな夢に囚われて目覚めないという結末。主人公の、妹を失った悲しみの深さをひたすら掘り下げる内容は、マルチエンディングの一つとしてでないとなかなか提示できないもので、価値がある。

【エロ】
克氏のCGは相変わらず素晴らしいのだが、もう一人の原画家のほうは平凡で、テキストやボイス等を含めた内容からも何らかの強いこだわりは感じられなかった。
総合的に見るとエロ目的で買うほど秀でてはいない。

【サウンド】
曲は全体的に高品質。盛り上げるシーンでの曲の出来は『アオイトリ』や『アマツツミ』と比べても遜色ないと思う。
ボーカル有りのオープニングテーマとエンディングテーマも夢の世界の妖しい美しさが感じられてGOOD。

…という感じ。『クロノクロック』より出来は良いが、自分が人にオススメできる域(7点)には達していない。
FDをプレイして評価が変わったらこちらにも追記しようと思う。

『バタフライ・シーカー』から遡る形でプレイ。
評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:7/10
エロ:6/10
サウンド:7/10
総評:7/10

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
『バタフライ・シーカー』と同じく、ジュブナイル色の強い推理もの。ただし、中盤以降はミステリというより異能サスペンスになるので、推理好きだとそのへんでギャップを感じて評価を下げる人もいる模様。自分はジャンル買いではないので特に気にはならなかったが。
『バタフライ・シーカー』がミステリとしての完成度を重視しているのに対し、本作は「コミュニケーションの大切さと難しさ」という普遍的テーマの表現を重視しており、ジュブナイルものとしての完成度はこちらのほうが高い。
序盤から強く陰の雰囲気が漂い、狂気や死に心惹かれる主人公は『雫』の主人公・長瀬祐介や『僕の心のヤバイやつ』の主人公・市川京太郎と同じカテゴリに属する。お察しのとおり、いろんなエンディングでリア充化するのだが、元々の方向性に沿ったエンディングもいくつか用意されているのは個人的に高評価ポイント。
直前にプレイした『アマツツミ』で自分が「興味深い」と評した話の構造だが、本作でも同じようなシングルエリミネーション形式。まあ、事件の真相を追うタイプの話なら、複数のヒロインに別々の展開を用意するほうが大変だしこちらのほうが都合が良いだろう。本作では真相以外の個別エンドは「おそらくは辛いであろう真実を追うのをあきらめて、日常の幸せを追う」という選択になっているので、十分に意味もある。

【エロ】
肉感的な女性を描いてCLOCKUPで活躍したはましま薫夫氏が原画。今作でもその力量は遺憾なく発揮されており、キャラも魅力的だが、エロ目的で買うようなゲームではないことは言うまでもない。

【サウンド】
タイトル画面で流れる曲、ボーカル曲など良質な曲が多い。ただ、特別にエモーショナルな技術の粋を集めたといえるほどのシーンが無いためか、印象としては良質止まりで、特別な高得点を与えるほどではなかった。細部まで整えられたエモーショナルなシーンは関わった全ての要素の印象を強めるので、そこで使われた音楽の評価も高くなりがち。サウンド単体での厳密な評価をすべき、なんてことはないので全然それでいいのだが。

…という感じ。性的虐待など、性的な内容が話に大きくかかわってくるので、正直『バタフライ・シーカー』のほうがコンシューマ向けと思えた。ちょっとPS4版での感想を漁ってみると、やはりそのへんをぼかしたり削除したりで不自然になっている箇所があるようなので、手を出すのであればPC版がよいだろう。

『アオイトリ』の御影氏が企画・シナリオ担当したタイトルで、アオイトリの直前の作品。アオイトリとは対になっているとも言われている。
評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:8/10
エロ:9/10
サウンド:9/10
総評:8/10

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
命令や断定の形で発した言葉がその内容通りの影響を強制的に人に与える「言霊」。その能力を持つ神の末裔たちの隠れ里で育った青年が、人として生きるために閉鎖的な里から逃げ出す。行き倒れ寸前で町にたどり着いた青年は、言霊の力でかりそめの家族と住む場所を得て、普通の人として生きることを学んでいく…というストーリー。
話の構造が興味深い。ヒロインは4人で、それぞれABCDで表すとシナリオは「A→分岐A'/B→分岐B'/C→分岐C'/D」と進む。ダッシュ(')付きの分岐に進むとそのまま個別エンド。いわばシングルエリミネーション形式?BはAの、CはABの、Dは他全員のシナリオを前提としたシナリオになっている。ループものではない場合に、他のヒロインのシナリオ中に得た知識等を登場人物に活用させようとすれば確かにこの構造は必然である。しかしその結果、3人を順に袖にしながらシナリオを進めていかねばならないので、苦い。この苦さはストーリーに特に必要な味わいではなく、『アオイトリ』ではループものになったこともあり取り除かれている。
一般論として、ストーリー中で感動させる/感情を揺さぶる/泣かせるのは「展開」「映像」「音楽」「音声」の巧みな組み合わせ方によるもので、この技術を「エモーショナルな技術」とここでは称する。本作は基本的にはごく狭い範囲の人間関係についての話で、スケールが小さく自分の好みに合致してはいないのだが、エモーショナルな技術は間違いなく高く、変にスレていたり細かいことを考えすぎたりしない限りは気持ちよく感情の波に浸れるだろう。
まあ自分はスレているうえに細かいことを考えすぎる質なのだが、それでも堪能した。
特に、最後のヒロインのシナリオは専用のOPムービーが用意されている凝り様で、涙腺デストロイヤー。
・人としての感情が希薄だった主人公は、ある人物に出会って初めて「他者への怒り」を知るのだが、自分はこの怒りにあまり共感できず、その人物を哀れに思う気持ちのほうが強かった。絶えず肉体を苛まれている状況では、人間の心は脆いですよ…。
・『アオイトリ』もそうだが、人間の闇の部分まで踏み込んでいくシナリオは好き。心のうちに闇を抱えてなお気高い生きざまや、闇を知っても前に進む意志が描かれるのが好き。闇があったほうが光はより映える。
・イーガンSFのスナップショットのような概念に親しんでいると「ん?何か問題ある?」みたいな考えになりかねないので超越的な概念に親しみすぎるのも考え物だな。生物学的に死んでもミームとして生きる、とかもね。
・タイトルは、日本神話系の知識がある人なら「天津罪」だとすぐわかるだろう。確かに、各ヒロインのシナリオはある種の罪悪感を軸にして作られているが、タイトルにはあまり関係がない。
・個別エンド部分はとってつけたように小さな盛り上がりが用意されているが実質的にはHシーン詰め合わせにすぎない。シナリオの山はすでに通り過ぎているので、個別エンド部分に期待すると肩透かしを食う。まあ、おまけモードに本編外のHシーン並べる形よりはずっといいのだが。
・自分の命を擲つ決断をあっさり行う主人公はヒロイックだが、人としての幸せの実感が乏しかった人間ならではの「生への執着の薄さ」ともいえる。これは『アオイトリ』の主人公とも共通しているし、ジュブナイルらしさでもある。人生の甘さを存分に味わった人間は生き汚くなるものだ。

【エロ】
水準と特徴が『アオイトリ』に近く、前作『クロノクロック』との間には明らかに何らかのブレイクスルー、もしくは意識革新が存在する。本作で実現されている『アオイトリ』の特徴とはすなわち、ねちっこく多様なエロティシズムの追求と、大量のCG差分である。
まだ徹底されてはいない。「テキストでこの描写を入れているのにその差分は無し?」と思うところや、CGと描写の不一致もある。つまり『アオイトリ』で完成に至る進化過程にあるということだが、目指している水準が高いがゆえに実現されているレベルもこの時点でかなり高い。
だが大きな違いもある。本作ではまだエロゲ的お約束の域を出ておらず、設定とシナリオの妙でお約束を超克した『アオイトリ』にはその点では遠く及ばない。プレイする順番が逆だったなら、改善できる点というのはまだまだあるものだな、と素直に感心できたところだろう。

【サウンド】
盛り上げるべきところで盛り上がるBGMが流れ、ボーカル有りのオープニングテーマとエンディングテーマも高品質。だが本当に素晴らしいのは挿入歌で、使われるタイミングも相まって涙腺攻撃力が抜群。声の演技やチュパ音などにも隙はない。…ボイスの伏字加工もない。が、日常系のBGMの水準は『アオイトリ』には劣ると感じたので満点とはしなかった。
なお、前作『クロノクロック』ではボイスの伏字加工があったので、この点でも何らかのブレイクスルー、もしくは意識革新があったことが裏付けられる。

…という感じ。
『アオイトリ』と対で語られるだけあり、全方位手抜き無しのストロングスタイル志向で良き。自分の目から見た完成度は『アオイトリ』のほうが上で、個人的な好みにも合致しているが、本作のほうが比較的ライトな層にも受け入れられそう。
どのあたりが対かと考えれば、『アオイトリ』が「悪魔の力が物語上で重要な役割を果たす、命が繋ぐ冬の物語」、『アマツツミ』が「神の力が物語で重要な役割を果たす、言葉が繋ぐ夏の物語」ということだろうか。西洋風と日本風という違いもあるかな。他にもいろいろありそう。
逆に、ストロングスタイル志向なところ以外にも似た部分は多くある。前述の、主人公が浮世離れしていて最初は幸福実感に乏しく人のために自らを擲つことをためらわない性格だとか、他者を強制的に変えてしまう能力を持つがゆえにコミュニケーション初級者であるとか。どちらから始めるにせよ、こういった相違点や類似点を考えながらプレイするのも楽しいだろう。

『処女(オトメ)はお姉さま(ボク)に恋してる』のライター&原画コンビによる作品。
評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:8/10
エロ:5/10
サウンド:7/10
総評:7/10

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
西暦2488年、自我を持ったアンドロイド「メトセラ」が人権を持っている未来の話。主人公とその仲間たちは偶然、学校の倉庫の奥の奥に隠された旧世代のアンドロイドを発見する。「彼女」を修理するために悪戦苦闘するうち、主人公は「彼女」と製作者の心に触れることになる…という感じのストーリー。
感情を強く揺さぶるような内容ではないし、積極的に涙腺を攻めてくるような内容でもないので自分が最も欲しているタイプの作品ではない。が、この、知性的で、情熱的で、真摯で、思いやりに満ちた話には一定の評価を与えずにはいられない。アンドロイドが登場する作品というのはだいたいアンドロイドを鏡として人間らしさや「心とはなにか」を見つめなおす話だが、この作品ではそれに加えて純粋に技術的に「人間らしさ」をAIに持たせるということにもかなりのテキスト量が割かれていて、知的好奇心の面でも興味深く読めた。普通に遠未来SFとして見た場合も、破綻なく設定が組まれていて好感が持てる。現代日本からかけ離れた設定であるほど破綻なく作品を成立させるための労力は大きいので、直前にプレイした『クロノクロック』等は労力をあまりかけたくない作品なのだなと感じてしまうし、目指している水準が高い作品のほうが作り手の気概が感じられて嬉しいものだ。完成度を十分に高められるなら、読み手として望ましいのはどちらかは言わずもがな。
恋愛ものとして見た場合は「主人公の仲間(友達)である女の子は昔から主人公のことが好きで、友達ではなく恋人になるためにアクションを起こし、主人公はそれをどう受け入れるか」というパターン内でのバリエーションだけなので物足りないかもしれないが、自分は恋愛ものとしての出来はそれほど重視しないので特に気にはならなかった。

【エロ】
キャラへの感情移入のさせ方が良いので一定の水準は保っている。が、内容はいわゆるエロゲ的お約束の傾向が強い。ヒロインの一人はメトセラで、女性として主人公を受け入れられるようになるためにパーツ換装と性感モジュールのインストールを行うのだが、そこで感度レベルの設定を「主人公のことをできうる限り強く感じたいから最大にした」とでもしておけばお約束に納得感のある理由付けができたのではないかと思うが、惜しいことである。
また、非18禁シーンのCGや立ち絵、背景には全く不満はないのに18禁シーンのCGがやけに魅力が乏しい。女性の身体を美しく描けていない、ということなのか?アップに耐えられる水準でない、という面もありそう。

【サウンド】
全体的にBGMの質が良く、ボーカル曲も悪くない。ボイスも実力派揃い。この手のゲームでは珍しく、主人公の一部のセリフにはボイスがついている。

…という感じ。
ノーマークの作品だったが、かなり良いものでした。やっぱり自分はSFが好きなんだなぁ。

【おまけ:最初の選択ルート】
フロゥ。メトセラとの恋愛をどう描くのかに興味をそそられたため。

『アオイトリ』の御影氏が企画・シナリオ担当したタイトルで、アオイトリの2つ前にあたる作品。DLSiteでサマーセールの対象だったから購入して勇んでプレイした。のだが…
評点は以下のとおり。いずれも7点が及第点(=それ目的でお金と時間を割く価値がある)。

ストーリー:5/10
エロ:5/10
サウンド:5/10
総評:5/10

総評は7点以上なら幅広くオススメできる。5点を下回ると駄作。5~6点なら題材やジャンル、原画家などで個人的な加点があればやってみてもいいのでは?という感じか。

【ストーリー】
「時間を5分間だけ巻き戻すことができる魔法の懐中時計」を手に入れた金持ちのボンボンの少年が、それをうまく使って失敗を回避しつつ恋人作って童貞卒業したい、と目論んで行動するが、そんなもの無くても失敗を糧に前向きに生きる少女に感銘を受けて、真摯に異性と向き合うようになっていく…という感じのストーリー。
プロローグ部分である程度の話の盛り上がりが用意されていたりと後の才気の片鱗はある。説教臭さを感じない程度に人生訓が織り込まれていていたり、ジュブナイルらしい爽やかさもある。
しかし、こういう「日常±1」程度の振れ幅しかない題材設定のストーリーでは、自分が最も価値を置く「心揺さぶられる感覚」はどだい無理な話である。
よくまとまってはいるが、この設定では上中下3段階評価のうちの中を超えることは決してできず、自分が他の人にオススメしたいと思うこともない。

【エロ】
克氏の絵は相変わらず素晴らしい。しかし、本作ではそもそも本編中にHシーンがなく、エピローグ後扱いのおまけシーンが各キャラ2つあるだけ。正直これはどうなのか?これではサプライズがない。サプライズは興奮を煽る要素になりうるというのに…。また、ルート内に存在しないので、そのキャラへの感情移入が一番高まったところでシーンになだれ込むという「勢い」の助けもない。おまけシーン形式はIFのシーンや時間的に大きく離れたシーンなど、本編中では不可能なもの以外はデメリットが大きいと感じた。
また、内容面もいわゆるエロゲ的お約束の域を出ず、アオイトリで自分を唸らせたような細部に渡るこだわりは感じられなかった。

【サウンド】
BGMはごく一部の曲は良かったが、全体的には平凡。ボーカル曲も特筆すべき点なし。ボイス演技の質に不満は特にないが伏字処理あり。短くてもピー音が入ってしまうとやはりいささか馬鹿っぽい。

…という感じ。
『未来ノスタルジア』や『明日の君に逢うために』よりは少しだけマシだが、本作も「この手のゲームの初心者になら悪くなさそうだが、目の肥えたユーザーにとってはとりたててプレイする価値のないゲーム」の域は出ていなかった。
まあ、自分の趣味にはあわなかった、というだけの話なのかもしれない。たとえばジブリ映画なら自分はラピュタは大好きだが魔女の宅急便やとなりのトトロはさほどでもないしな。当たり外れがあるのを覚悟して発掘を続けるしかないか…

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