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電源不要系同人サークル「Paper Entertainment Factory」のアナウンスと、適当な駄文。
読了。
ホラー文庫だが、自分の感覚だとこれはSFにも属する。特に、「特殊なガジェットでもって人間存在の一側面を斬り、その断面の様相を見せ付ける」タイプのSFである。
そのガジェットが現実的にはありえないと思えても、そのガジェットが存在することによって作り出される状況こそが重要なので、リアリティの有無は些細な問題である。まあ、リアルであるにこしたことはないのだけれども。
で、この作品で切り取られて見せ付けられる人間の一側面というのは、「他者への自己の理想像の投影と、自己の精神的空虚を他者の存在で埋めることの不健全さ」である。こう書くと非常に淡白な印象だが、その不健全さをこれでもかと見せ付ける話になっていると言って間違いないだろう。
著者は脱稿時23歳だそうだが、その若さでこれだけのものを書き上げるというのはたいした才能である。特に、不健全さが滲み出るような文体がこの作品にあわせて作ったものであり、他の作品では違う文体と使い分けられるのであれば凄いことだ。今後に期待される。
なお、巻末の受賞コメントには親と友人への感謝の言葉があり、その親に「物は運や偶然でも手に入るが、人間関係は努力や才能でしか手に入らない」と教えられ、それを金言としている旨が書かれているのだが、その様子もまた著者の若さが感じられて微笑ましかった。個人的には人間関係にも運が大きく絡むと思っているのだが。
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読了。
黄昏に沈み行く日本の世相の空気を反映した設定。陰々鬱々としていて一片の救いもない。著者のあとがきに「ホラーの不幸はあくまで物語であり、コントロールできる不幸。読者はそれが物語の中だけの不幸であることに安堵し、現実の自分にそれが及んでこないことで心の平穏を得て癒される」みたいなことが書いてあったが、世相の空気の暗い部分や澱んだ部分を掬い取って設定に反映させた話から受けた陰鬱なイメージは読了後も癒されないと思うのだがどうか。
世相の空気を反映しつつ、ホラーで、読後の癒しも狙うのなら、格差社会の勝ち組が恐ろしい目にあって破滅する話にでもすれば、世の中の多数派読者のルサンチマンも充足されて理想的なのでは?と思ったりした。

話の内容そのものについては触れないが、関係のある事柄についてつらつらと。
★「いじめの傍観者は加害者と同罪、場合によっては加害者より悪い」という主張がときどきあるが、FKに言わせれば論外。被害者に手を差し伸べることで自分も被害者になる場合があるのに、第三者にそれを強要しようというのか?そう主張する人間は常にそれができるのか?また、自分の子供が第三者である場合でもそう言えるか?ありえない話だ。最も悪いのはいじめの加害者、それは自明。
あえて他に悪さの順列を決めるなら、次は教師ということに一応なるだろう。しかし、モンスターペアレントに脅かされ、お客様気分の生徒達に舐められきった立場の弱さでは教師側に何かを期待するのも酷か、とすら思える。
そのつぎは被害者の親だ。被害者に相談されないならその程度の信頼関係でしかないことが問題だし、学校という、未成熟な人格がぶつかりあう場での危険から心身を守る術を子供に教えていない、というのはまったくもって甘いとしか言いようがない。
そして最後は被害者本人だ。「被害者にもいじめを受ける原因がある」なんて陳腐なことを言うつもりはない。被害者側に非のない理不尽ないじめもある。そうではなくて、結局は被害者自身の安全保障の問題だということだ。守りの備えをきちんとしていなかったから侵略を受けました。そりゃあ一番悪いのは侵略者側だろう。しかし、安全保障の意識に欠けた被侵略側に反省すべき点がないといえるか?甘えるな!学校は戦場だ!

★上とも関連するが、とにかく甘ったれた人生観の人間が多くて辟易する。「世界は無慈悲で無意味で無秩序な混沌の状態こそがデフォルトであり、平穏・平和・秩序といった状態はその荒れ狂う波の中に一瞬形作られた泡のようなものにすぎない。」そして、人間たちはその泡を努力して維持している、というわけだ。
それを、泡のほうがデフォルトと誤解してる人間が多くて多くて…。

★「最終喜械は最高の文化的装置」まだバブルの残照が色濃く残る16年前にこう書いてのけた木城ゆきとは大したもんだぜ…

読了。AURA同様のスクールカーストもので、AURA同様にシリーズ化されそうにないラノベ。
というのは、スクールカーストものは敵があまりにも等身大なせいで、一応の解決をみたあとはそれ以上の展開を作りにくい。一番簡単な新展開手法である敵のインフレ化が使えない。かといって、全ての問題を解決させきることもまた難しい。自然、一発屋にならざるをえないわけだ。

で、文章やテンポ、ギャグの挟み方は相変わらず巧い。のだが、話のオチのつけかたにどうにも肩すかし感がぬぐえない。
小早川さんの舌鋒が炸裂する箇所が「炎の剣を振るう」という風に抽象化されているというのが1つ。まるで、ラスボスに対して「いくぞォォォッ!」と武器を構えて走り出したところでホワイトアウト、ホワイトインしたら草原でのんびりと寝て平和を満喫しているシーンに繋がったような感じ。
そして、賢人独裁完成ハッピーエンド!というのがとてもではないがリアリティを持って受け入れられない。場の雰囲気に流されやすい集団心理が相手とはいえ、集団心理で醸成された悪意がそんなにすっぱり消えてなくなるわけない。絶対に、見えにくい陰のところで悪意がとぐろを巻いて成長しつつある。そうとしか思えない。それとも、そんな暗部は悉く主人公が氷の刃で刺殺するとでもいうのだろうか?教室内に独裁者+秘密警察誕生!というブラックユーモアなのかも。独裁の萌え化。うーん伝わりにくそう。

読了。イーガンの最新短編集。

★クリスタルの夜
シミュレーション世界の中で知性を誕生させる話というのはSF的には新味はない。登場人物が被造物側か創造者側かという違いはあれ、『神は沈黙せず』もこの系統の話だ。
ただ、「なぜ知性を誕生させようとするのか?」という点について『神は沈黙せず』ではゲームのAIや機械に組み込むAIとしての利用程度でしか言及されていないが、本作ではもっと強力で実利的な理由がつけられている。
「創造者と同等あるいはそれ以上の知性を備えた被造物の集団が、創造者の世界よりもクロックアップされた世界で自然科学の研究と調査を行えば、その成果をはるかに早く受け取ることができる」すなわち、自然科学的発見について未来を先取りすることができる、ということである。これにはなるほどと思わされた。
しかしその一方で、人間は「できそうだったからやってみた」というだけの理由でもいろいろなことをやるものではある。特に研究者は。だから実際のところこの題材に理由はさほど重要ではないのだろう。

★エキストラ
「クローン」と「精神は脳のどこにあるか」という、これもわりとありふれた題材の話。しかし、実際にクローン技術が当たり前のように使われている社会とはどのようなものであるか?という描写にイーガンの入念なる想像力が結実し、読み飛ばして「ふ-ん」で終わるような話の域を脱している。

★暗黒整数
『ルミナス』の続き。純粋に数学的な計算だけで世界を揺るがしたり揺るがされたりするという素晴らしく飛躍した発想はルミナスの時点ですでに発されている。本作は一発ネタだったそのアイデアに肉付けしてドラマとスペクタクルを盛り込んだもの、という感じ。『ルミナス』だけでは映画にはなりえないが、『暗黒整数』とあわせて一本の映画にすることは可能であろう。

★グローリー
冒頭数ページ分の、超光速ではない現実的な方法での宇宙航行法についての描写はマニアックすぎて自分にはちんぷんかんぷんだが、これもハードSF書きイーガンの真骨頂だろう。テーマとしては「拡張者」と「探求者」という2つの知性体のあり方、および後者が全てを知り尽くして目的を喪失する可能性について。哲学的命題としても実用性が希薄なことこのうえないが、人格のソフトウェア化をしばしばガジェットとして扱ってきたイーガンゆえに、「知が極まったその先」を思索の対象にするのは実に彼らしいと思える。

★ワンの絨毯
『ディアスポラ』の別バージョンの1エピソードのような話。強烈などんでん返しとして素晴らしいセンスオブワンダーが炸裂する傑作。これぞSFを読む醍醐味。

★プランク・ダイヴ
イーガンの真骨頂である、ほぼ物質的な制約から解き放たれた人間知性を登場人物とし、彼らの特性ゆえになしうる自然科学的探求のための決死行。これまたマニアック極まりないハードSFチックな目的である。
しかし、ガジェットを取っ払ってテーマだけをむき出しにしてみれば、「他の誰にも結果を伝えることができない、単なる自己満足としかいいようのない探求の意味」についてであり、それに肯定的なイーガンの書き様に、後にぺんぺん草も残さない自己満足的な生き方も是とするFKは共感を覚える。

★伝播
ガジェット的にはグローリーのそれとほとんど同じで、発表された時期もほぼ同じなので、ネタを共有した姉妹作と言えるかもしれない。「探求者」としてのあり方への言及もあり、テーマ的にも共有している部分がある。

観に行った池袋東急(年内に閉館)の枯れっぷりにさみしくなった。JR池袋駅から徒歩三分のあの立地で、まるっきり場末の映画館臭を漂わせていたので…ある意味貴重ですらある。

それはともかく。

知り合いの中では、カプコンのマーブルVSシリーズで知っている人が多そうなキャプテンアメリカ。
話としては正直かなりどうしようもない。チビで貧弱ボディだけど善良で正義感あふれる主人公が科学の力でマッチョボディとスーパーパワーを手に入れて大活躍。実に、マッチョイズムに支配されてるアメリカらしい話だなー、と思わずにいられない。ヒロインは有能な女性軍人で、真正面から猛進してくる敵の車にひるまず射撃を続けるような女傑なんだけど、彼女との関係が深まるのも主人公がマッチョ化してからなので、「結局マッチョがジャスティスかよ!」というツッコミに有効な反論はありそうにない。
あれだ、昔のボディビルの広告であった「まったく、簡単、だ」「おーい君たちおいでよー」の世界だな。

絵的な見所は、
1)実写でそのまま提示すると浮きまくること必定のあのコスプレタイツ姿を、かなり現実的なデザインの衣装として落とし込んだこと。
2)メカ類。ジェットヘリ、光線砲戦車、有人飛行爆弾、全翼機など。いい味出してます。
3)クライマックスの、全翼機の追跡→乗り込み→有人飛行爆弾と放り出される→コントロールを奪って、対空砲火をかわしながら再突入→ボスの待つコックピットへ、という流れはハラハラドキドキの盛りだくさんでGOOD。

残念なところは、
1)シールドを使った戦闘シーンが映えない。シールドでぶん殴ったり敵の攻撃を防ぐだけではどうにも地味。どうにかできる可能性があるとしたらシールド投げだが、それも非常に普通の使い方止まりだった。もっとこう、投げたシールドを複数回反射させて標的に当てるとか、一投で複数人を倒すとか、反射させたシールドと本体の同時攻撃とか、「おおお!?」と思わせるアクションはありえたんじゃないだろうか。
2)ボスであるレッドスカルとの戦闘が地味。レッドスカル自体が地味ともいえる。キャプテンアメリカもシールドで戦うのは決して派手といえないが、拳銃と徒手格闘というレッドスカルの地味さはヤバい。キャプテンアメリカの地味さと相乗効果で、もう…。

全体的に言って、静止画のクオリティは高いがアクションがもうひとつという印象でした。

読了。
イロモノというか中二病的設定というか、最初に提示されたときに「え?」と軽く引くタイプの外見的キャラ付けをされたヒロインである少女探偵と、ワトソン的立ち位置の大学生が、殺人事件の謎を追いながらツンデレ的掛け合いをしてKKUMMする話かと思ったら全然そんなことはなく、全てはどんでん返しのための必然だった。
この、作品全体についての印象の裏切られ方も込みで、まさに作者の意図どおりであろう。

しかし、途中まで(というか、全体の4分の3まで)そういう印象を持たれることについてはどうなんだろう。
FKはミステリに詳しいわけではないのではっきりとは言えないが、探偵は奇人変人と紙一重なキャラ付けをされることすらに珍しくないのでこの程度で読者は引いたりしないということなのだろうか。

あと、「いかに読者の意表を突くか?」ということを目的とし、そこから逆算して作った話、という印象を強く受けた。ミステリなら珍しくないことかもしれないが、緩い括りでの「ミステリ」だと申し訳程度に謎がくっついてるだけのものもあったので…。
そういう点では本作は本格ミステリと言ってよいのかもしれない。

これを読んで再確認したが、FKにとってホラーストーリーは多少の超自然要素が含まれていないとダメかも。
人間の怖さ、というものだけで勝負する話は、実話の持つ怖さおぞましさに比べてどうしても分が悪くなる。
それは、FKが「人間の暗黒部分を知る」ために犯罪録とかを調べまくった経験によるものだろうけれども。この「汚れた檻」についても、埼玉愛犬家連続殺人事件や大阪愛犬家連続殺人事件からネタをひっぱってきたんだな、程度の感想しか持てなかった。

しかし、ケッチャムの「隣の家の少女」や「オフシーズン」は普通に興味を持って読めていた気もするな…。単純に筆力の差か?それとも、ケッチャムの本を読んだ時点ではそれぞれの元ネタを知らなかったとか?こっちのほうが恐怖の掘り下げ方がやっぱり浅いようにも思える。恐怖というより、単に不快な話にとどまってしまってるような。「魔太郎がくる!!」のヤドカリ一家の話、「不気味な侵略者」が思い出される。最悪に不快な話だけど、ホラーじゃないだろう。

カタルシスもヒロイズムもある。切なさもほのかな苦味もある。うん、綺麗にまとまったじゃないですか。ブラスレイターのグダグダが嘘のようだ。
震災でしばらく放映を止めてたのは、むしろ震災を建前に残り二話を作りこむ時間を確保したんじゃないか、というのがFKの読みだったけど、真相がどうあれこのクオリティで仕上げてきたのなら文句なしです。

ただのミスディレクション、伏線のようで伏線でないというフェイクが無いとすると、この話の収拾のつけ方はもう以下のようなものしか無いように思える。

虚淵玄は文章にこそ価値があるのであって脚本には期待できない、というのがブラスレイターを全話見たうえでの感想だが、各所でいろいろ言われてる噂のアレも視聴してみることにした。新房でもあるし。

・新房は微妙にゆがんだ構造物とか影とか陰とかで人を落ち着かない気分にさせるのが実にうまいな…!魔女関係のデザインのシュールさというかサイコっぷりは誰発案なんだろう。
・まったりのほほん系のキャラデザとかOPとか☆とかミスマッチすぎる。これが本作の味か…。で、過去の新房作品であるひだまりスケッチと同じキャラ原案だから人呼んで血だまりスケッチ。誰がうまいこと言えと。
そういえば魔法少女リリカルなのはも新房なんだぜ…。同じ魔法少女を冠していても対極にもほどがある。都築さんと虚淵ではベクトルが真逆だから当然だが。
・4話終了時点でまだ主役キャラが魔法少女でないという時点で普通の魔法少女ものではない。
・願望の代償に命をかけて壮絶に戦う、っていう話であるからFate/Zeroを書きあげた虚淵なら確かに適任かもしれん。バトルロイヤルではないけれども。そして、Fateにせよ仮面ライダー龍騎にせよ、こういう「滅びを内包した話」がすっきりハッピーエンドになったためしはない。なるはずもない。そうか、ブラスレイターも変に取ってつけたような一応のハッピーエンドにするのではなく、救いようの無い結末もしくは人倫を超越したレベルの価値観ならハッピーといえるかも…系の結末にすればFKも納得できたのか。かもしれない。誰かが横から口出しして、あんな結末になったという可能性もあるな。虚淵が納得づくでああいう結末にしたとはちょっと信じがたいし…。

結論:とりあえず目を離せないアニメではあります。目を離している間に酷いことが起こってそうで…

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男性
職業:
ゲーム会社勤務
趣味:
電源不要ゲーム
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